2012年3月21日水曜日

AGEに学ぶ -戦争を100年続ける方法-

戦争は始めるより終わらせる方が難しいといわれる。しかし、そのための努力を誰も行っていないというのは一体どういうことなのか。『ガンダムAGE』にはゴールを明らかにして戦っている人物が一人も出てこない。そこが本作のたまらない魅力であると言える。


主人公は、復讐したいとか、裏切った友人と決着を付けたいとか。
他の軍人・軍属は戦争だから、命令だから、敵が襲ってくるから戦っている。
では敵はどうか。彼らは口では復讐を唱えつつ、どうしたら気が済むという目標を明らかにしていない。
一般人に至っては、そもそもこの戦争をどう思っているのかの描写が出てこない。

主人公親子は、基本、個人的な感情の決着が動機付けの中心にある。だから現時点では彼らに戦争の終結への働きかけを望むのはかなり無理だろう。他の人々は、目的はあるけど、目標がないまま戦っているかのように見える。「敵を皆殺しにしよう。そうすれば解決だ」とベタなことを言い出す者さえ出てこない。


かつての移民が本国に捨てられたことの復讐を果たしにやってくる。しかし、その復讐は正当性を堂々と主張されることもなく、なぜか復讐される相手にそれと気づかれないように行われる。忘れられたことを憤っているはずの彼らは、相手に向かって「自分たちに行った仕打ちを思い出せ」と叫ぶことがない。聞かれたら答えるだけだ。

他方、捨てた当事者である連邦の側はどうか。こんなことになった以上は責任とは言わないまでも真相を追求しようという動きが出てくるかというと、そんなことが行われている雰囲気はない。相手の真意を探るべく接触を図ろうなどとは思いも寄らぬといった感じだ。捨てられた側が声高に当事者に経緯説明と責任者の処罰を求めるとか、謝罪と賠償を求めるとかいうことをしないのを良いことに、のらりくらりと相手の攻撃をしのぐだけだ。まさか、視聴者の見えないところでやっているのか。


降りかかる火の粉とか、とにかく生き延びなければという動機で主人公がロボットに乗って戦う。それはいい。だが、戦争を主導する立場に上り詰めた人間までが同じレベルで戦争を考えてるというのは…むしろリアルすぎて嫌だ。


今後の展開予想は「連邦の大物がラスボス。ただし本人は小役人タイプの人物で、過去の失敗を糊塗するためだけに大勢を巻き込み、自身も勤勉に働いている」というもの。どうか外れますように。



ps. ちなみに私は製作者や役者の裏話は楽しく聞くが、裏設定の類は適当に聞き流し、なるべく作品自体の中で提示された情報だけで作品を評価したいと考える方だと自己評価してます。
ps2.他の作品と比較して論じてはいけない。いけないと分ってるんだけど……助けてルージきゅん…。