2013年2月20日水曜日

まおゆう

子供の頃読んだ、宮沢賢治の本に「世界全体が幸せにならないうちは、個人の幸福はありえない」みたいな言葉が書いてあったのを思い出した。賢治自身の言葉だったか否かは忘れたが。
賢治は田舎のしかも文筆業の人だったので、例え本心からそう思っていていたとしても、実際に世界全体を幸福にするなんてことはできっこなかった。

『まおゆう』は知識や権力、戦闘能力など、現世的な力をたまたま持ち合わせてしまったために、世界全体を平和にすることに実際に取り組まざるを得なくなった男女の話だ。……というような見方をしている。
彼らがもっと横着な性格であれば、適当なところで手を打って、それこそ世界の半分を山分けにすることもできただろう。しかし、それをやるには彼らは生真面目すぎたし、横着の行き着く先がどうなるか見えすぎ、そして彼らの住む世界は分かりやすく不幸すぎた。
彼らの目指す方向(近代化)とか手段が、倫理的にあるいは社会学経済学的に正しいかってのには、あまり興味を持っていない。フィクションの世界の住人に暮らしの満足度アンケートとか、取りようがない。であれば、その幸不幸を云々することさえ机上の空論だ。

そんなことより、彼らと彼らに巻き込まれた人々それぞれの、希望とか、才覚とか、不満とかがどのように絡まっていくのか、そういうのを見届けたい。そういうことを期待している。

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