2024年10月5日土曜日

茨城県へ

前に「千葉県つくば市」に行ってから、2年近く経ってしまった。
今度こそ、茨城県つくば市に行く。


地質標本館


「でも、遠いからなぁ」と先延ばしにしてきた施設。

産総研の広大な敷地の中にある。割と奥の方にあるので、守衛さんが経路を教えてくれた。

入口から入ってすぐのところに火山に関する企画展示パネルがあり、福島ネタが。
福島県の火山が3タテで噴火したことが、国を挙げての火山研究のきっかけになったのだという。その隣には、なじみ深い磐梯山の地質図。磐梯山周辺は、宮城県南出身の私にとっては県北よりも身近な観光地だ。地質図だけ見せられて、「あぁ、磐梯山ですね」というわけにはいかないが。

テレビ番組等で、同館が紹介される時、必ず引き合いに出される日本列島のプロジェクションマッピング。平日で、来館者が少なかったので、ほぼ独占。

地質図に鉄道網の線を重ね合わせてみたところ。東北本線、常磐線、阿武隈急行、飯坂線、磐越東線・・・。地質図余計だったな。

衛星写真に構造線を重ねてみたところ。えっ、この線は…。水郡線、棚倉構造線の真上じゃん。なんとなく、この「道具」の使い方が分かってきた。

青い点は下水道施設。東京湾周辺にたくさん並んでいる。既知の…むしろ、東京駅からつくば市へのバスの窓からも見てきた、水再生センター、ポンプ場群が思い浮かぶ。
後から思いついたんだけど、上水道施設の表示も出来たので、重ね合わせるなりして立地の違いを比べて見てみれば良かったな。次回以降の宿題としよう。

別の展示。都内、山手線沿線の埋没谷。埋没谷の上は「やわらかい土地」なので、注意が必要…という展示で、ご想像の通り、JR京浜東北線以東(そもそもが埋立地だ)や渋谷川(古川)周辺はメタメタ。
…というのは置いといて、自分が気にするのは白金・高輪間の谷。坂道ばかりで無茶苦茶歩きにくいのだ。

こちらはタブレットで操作できる3D地質図。複数箇所に対応していたが、ねったい館のある高島平周辺を選んでみた。

地質「標本」館なので、多数の標本がある。お触りNGのものも、お触りOKのものも。
むしろお触りNGのものが、素人には「なにがどう貴重なのか」わかりにくい。
お触りOKのものは「あぁ、これ○○(お寺、河原、etc.)で見たことあったわ」くらい。これらの岩石は「お触りOK」というより、「触らないと損」くらい手触りが違う。

茨城県では、花崗岩を食べているらしい。

鉱物標本の数々。色とりどりの姿は、最近の多色成形プラモデルを思わせる。なんか、途中で作るのやめちゃった感じになってるけど。

無茶苦茶、情報量が多い場所なんだけど、それをくみ取る側にも相応の知識が必要…みたいな場所だった。こういうのは分かれば分かるほど面白くなるものと信じているので、次回はちょっとくらい予習して行きたい。


食と農の科学館


1時間くらいバスを乗り継いで、別の館へ。つくば市、千葉県と茨城県を合わせたくらいの広さがあるんじゃ無いの?
ちなみに、この畑は、農研機構の敷地の一部でれっきとした研究施設だ。

食と農の科学館。平日にしか開館していない社会人泣かせの施設。…というより、皆、「仕事で」見学に来る施設なのだろう。見学者が記入する用紙には「作る側」「食べる側」どちらの人間なのかの記入欄があった。

水田の水管理を自動化するシステムの展示。『天穂のサクナヒメ』にも、これがあれば途中で挫折せずにクリアできたかもなぁ。

…というか、コラボ展示があったよ、サクナヒメ。現地に行って初めて知る…。
ゲーム中に登場した道具の実物(あるいは再現品)がいっしょに展示されているので、米作りにハマった人はイメージ掴みに行ってみては。2025年1月上旬まで

「国内農業系研究機関では初」という触れ込みの、農業用AI研究用スパコン「紫峰」。「紫峰って何なの?」とググってみたら筑波山を示す言葉だった。世の関心は汎用AIに向いてる感じだが、私自身は、こういう用途とか色とかキャラ付けとかが効いているものに親しみを感じる。

害虫の天敵となる生物を農薬代わりに使う農法、その天敵を継続的に供給する仕組みを作ろうという主旨の展示。「天敵銀行」というインパクト満点のパワーワードを見つけて小躍りする。いや、だって、文脈なしに「天敵銀行」という言葉が突然出てきたら、いったい何を想像する?

「土壌」! それは人間の科学では未だ合成できない(と、どこかに書いてあった)、有形にして無形の天然資源。剥ぎ取り標本あると見入ってしまう。私が見て何が分かるわけでもないのだけど。

遺伝子導入で作った青いキクのアクリル標本。アクリル標本は最近よくみかける。見栄えをそのまま保存できるというのが大きいのかな。

農業におけるミツバチたちの貢献が金額換算されていた。お金を尺度にするといろいろなものが見えるようになって便利だね。

牛のゲップのメタンで地球温暖化。どっこい、メタンは水田からも出てるよという話。

木から酒を造る話。これは飲んでみたい。(ただ、スギはちょっと…)

東日本大震災と原発事故を受けてのモニタリングと研究。海産物ほど話題に上っていないような気もするけど、こちらも調査研究が継続中。
今流通している農作物が危険かどうかという話では無く(そちらは直接農作物を計測できるから)、土・水・植物間の物質交換をモデル化して、長期的な予測を可能にしようとしているらしい。
放射生物質だけじゃなく、塩害の研究もあり。もうちょっと時間取って読めば良かったな。

古代から現代に至るまでの様々な農機具のコーナー。各地にある郷土博物館+10αくらいの展示物がある。ココロワヒメの技を受け継いだ者達の製作物が並んでいる。

地質標本館と比べると、いかにも貴重な標本です!みたいなものは少ない(だって、皆で一緒にやるものだから)。
一方、いろいろな切り口で「日本の食と農業」を見せてくれるので、ほとんどの人は「なんか印象に残った展示」を見つけられると思う。

2024年9月23日月曜日

コミックダッシュ 新刊カレンダーの最近

コミックダッシュ 新刊カレンダー

コミックダッシュ!新刊カレンダーのPython2.7対応

こちらも運用して、既に10年以上。

気がついてみたら、エラー率が急上昇していた。

エラーが起こっても、カレンダーサービス側の表示が維持されるので、ログを確認しないと一見して正常に動いているように見える。結果、コミックダッシュ側のサーバーから「アクセス多すぎ(429)」でお断りされていたのに気づくのが遅れた。

アクセス頻度を落とすのもできなくはないのだけど、その分、ユーザーがリストの更新をしても反映されるのに時間がかかる、ということになるので、どうしたものか思案中。

勝手に便乗しているだけのコバンザメなので放棄も視野に入れたいところなのだけど、カレンダーまでサポートしている他サービスも見当たらないし。

2024年9月21日土曜日

昆虫MANIAC

前から怪しいと思っていた、この界隈。
国立科学博物館の特別展『昆虫MANIAC』だ。

ポスターや他の宣材で強調されるのは、虫より研究者だ。純粋に昆虫展を期待した人はこの先何度も驚かされることになると思われる。

『昆虫MANIAC』と言いつつ、本展ではクモなど昆虫以外の生き物も「ムシ」として扱う。オレオレ定義という奴だ。苦手な人は「話が違う」とUターンしそうなものだが、そんな人はいなかった。

「見る」以外の展示、今回も行われていた。写真は「聞く」展示。セミの鳴き声、しかも13年、17年という長い周期で、サイクルの長さをキャッチアップすべく、大規模に繁殖する「素数ゼミ」の大合唱を穴に頭を突っ込んで聞く。
2024年は、この13,17という素数の最小公倍数、221年ぶりの当たり年。(素数なんで最小公倍数も13×17)
本物は屋外でもパチンコ店の店内くらいの音量になるらしい。

コーナーそれぞれには、各コーナーを代表する「ムシ」の巨大な拡大模型が。写真を撮って拡散しろ、という暗黙のメッセージを感じて、皆写真を撮っていた。

現在、発見されている中で最小の昆虫(エクメプテリギスホソハネコバチ, 0.139mm)。見るのに顕微鏡がいる小ささ。「現在、発見されている中で」というのは、種の数全体(推定500万)における発見済の種(推定100万)の割合が少な過ぎて、大きい方はともかく小さいほうは言い切りが難しいからだ。
「ムシ」の世界においては新種の発見は研究者の日常とまで言い切られていた。ブルーオーシャンだ。

「土瓶割り」と、豪快なあだ名を付けられた蛾、クワエダシャク。もっとも、土瓶を割るのは、枝に土瓶を引っかけようとして、間違って枝に擬態した蛾の幼虫に土瓶を掛けようとした人間である。蛾のせいにするのはよくない。

体の半分がオス半分がメス、昆虫界のあしゅら男爵。「たくさん捕まえると、その中に…」と書かれていたが、昆虫研究者の「たくさん」がわからない。

この「おわり」は、新たなクラウドファンディングの始まりを予感させる。
家に帰って確認したら、ウチのタンスも終わってた。

科博では珍しい生体展示。残念ながら、壁面にへばりついている個体はいなかった。
(特定の行動の展示は、本職の動物園でも苦労するところ)

生体展示、もう一つは動物の糞を食べる糞虫。お隣の上野動物園からエサが提供されていた。この特別展がこの後、全国巡回するとしたら、それぞれご当地の動物園から分けていただくことになるのであろうか。

チョウシハマベダニ(Ameronothrus twitter)、イワドハマベダニ(Ameronothrus retweet)、ともにSNSでの写真投稿がきっかけで「発見」された新種。シチズン・サイエンスすなぁ。

階段降りて、長い廊下。その廊下と同じくらいの長い捕虫網。プロの昆虫採集道具だ。
ただの黄色い皿(色が重要とのこと)と、半分に切られたマヨネーズ容器。こちらもプロの道具だ。実際の使い方、そして研究者が各々の専門とするムシをどのように採取しているかの解説動画があった。小学生の夏休み前にやってくれよ。
「地球の宝を守れ」とスローガンをかかげ、つくばにドデカい収蔵庫を建てる、その中から「世界唯一の貴重な資料」を取り出す一方で、テーマに則してこういう展示物を差し込んでくる。これも「科博の特別展」の面白いところ。

研究者への質問コーナー。一番無難に思えた奴。

昆虫みたいな、多様すぎる生物種の展示って、間口を広く取ろうとすればボンヤリと珍しいものを並べて終わりそうだし、深さを追求すると大半の人がスルーせざるを得ない狭いものになりそうな気がしていた。この特別展は、普通に展示したら前者になりそうなものを、暗黙にあった「研究者の視点」を前面に押し出して再編集することで、見る側の視界をクリアにすることに成功していたと思う。


オマケ: もう手放しちゃったよ、重要科学技術史資料……。