2022年11月23日水曜日

千葉県立現代産業科学館

雨が降ったので、屋根のあるところへ行く。

目当てはこれ。企画展「ネジる ツナガる」だ。

大田区にも「三和鋲螺」というネジの専門店があるが、さすがに観賞用に最低100本からのネジを買おうという感じにもならず、未だ訪問に至っていない……。
そこに降ってわいたネジの企画展。『ヘボット!』のファンとして飛びつかない手はない。

まず目につくのが、企画展示スペースの入り口前に鎮座する巨大なネジ。建造物の基礎として使われるアンカーボルトだ。このサイズになると、ネジ山は専用の切削機械で削り出しだ。傍らの透明ケースで展示されているのは削りかす。ネジ山の螺旋を反転したように削りかすまで螺旋の形になる様は、まるで『天元突破グレンラガン』の演出である。

“これが螺旋の力かよ。たいしたもんじゃねぇか。”

こっちは火縄銃の再現のために、日本の鍛冶屋が試作したものっぽい。日本人と(固定具としての)ネジの出会いは火縄銃から。

こっちは現代のハイテク。ネジの中に各種センサーが仕込まれ、通信で「建造物の中」から淡々と環境モニタリングを続けるスマートネジ。星野鉄郎だ。
このネジ、単に電子ガジェットとして面白いというだけのものではない。ネジ山に工夫があって、左巻き、右巻き両方のナットが使えるのだ!……と書くと、何やら微妙な感じのありがたさだが、反対方向のナット2個を組み合わせて締めることにより、ネジが勝手に緩むことがなくなる、というところがポイント。

なんと驚いたことに、ここまで、企画展の展示スペースの外しか見ていない。

入口から入って、最初の展示物がこれ。自動車1台に300本。ここまで乗ってきた電車、渡った橋、道路脇の標識に自動販売機……。おびただしい数のネジに囲まれて人間は生きている。

企画展スペースの中は、火縄銃以外にもあった日本のネジ状のもの(固定のための部品ではなく、動力を伝える用)などの歴史展示。
ネジの規格や分類あれこれ。あるいは、製作工程などを映した動画……。
はたまた、子ども(大人も)がネジを使って遊ぶ体験コーナーなど。
そして、「これどうよ」って、メーカーの鼻息が聞こえてくる感じの製品の数々。


直径わずか0.6mmの極小ネジ。鼻息で吹き飛ばして泣きたい時用。

現代のネジに見られる工夫の一端(拡大模型)。締め付ける時に、ネジ山が部材の一部を削って「谷」を作るタッピングネジと呼ばれるものの一種だが、削られた部材の削りかすを山谷の間に溜めて、それに緩み防止の役割を持たせるというもの。
ネジの進化とか、ネジ山の作り方の工夫で実現しているものが多いのだけど、細かすぎて老眼にはつらい。

プラスチック製ネジの数々。単純な見栄えじゃなく、意外に用途が広いことに驚かされる。

他にも色々展示物があったけど、一番のハイテク製品?は写真撮影不可。

人工衛星打上げ用ロケットの部品で、まさに人工衛星を宇宙に打ち出すその瞬間。500本のネジが1/1,000秒の誤差で一斉に破断するという。「必要になるまで壊れてはいけない」「必要になったら必ず、同じタイミングで壊れる」という二律背反の要求に応えることで、初めて用をなすものだ。
数百本のものを同時にっていうところで、変な笑いが口から漏れる。


ここの展示物にはなかったけど、引越しで購入した、組み立て家具のネジも以前とは全く違うものになってたしなぁ。また10年くらい経ったら、今回とも違うネジにお世話になるんだろうなぁ。


この企画展で、わりとお腹いっぱいなのだが、常設展示も見る。

常設展示の中心は「現代産業科学館」の名にふさわしい、近現代の産業を支える要素の中の3つ。「鉄・石油・電気」だ。

製鉄用高炉の模型。中二階から二階へ突き抜けているこの巨大な物体が、本物の1/10サイズの模型だ。なお、高熱になる部分がピカピカ光る。

二階の展示室は、先の3つを、右手側を工業の黎明期からの歴史、左側を現代の状況の二列に配置する形でまとめられている。

製鋼や石油化学はかの『Dr.STONE』でも、わりとシンプルにまとめられてしまった(写真日記とか)ので、そこを中心に見せてくれる展示はうれしい。
で、『Dr.STONE』を読み直すと、この博物館の展示物と同じものが描かれていたりするので、連載終了&単行本完結でロスに陥っている人は見に行ってみると良いと思う。


デーン!と鎮座するこれは、発電所のタービンなんだけど、軸方向から撮影すると形がよく分からないな。

自宅から距離あるから、何度もっていうわけにはいかないけど、常設展も充実しているし、面白そうな企画があれば、また行きたい。


2022年11月13日日曜日

千葉県へ

「日帰りで遊びに行ける限界の時間距離」と自分で定めた限界の遠さだったので、先延ばしにしていた千葉県つくば市。意を決して行ってみた。


地図と測量の科学館

私はどこから来て、どこへ行くのだろう(迷子)

意を決してつくばエクスプレスに乗ったものの、研究学園駅手前で「財布を忘れた!」ことに気づく。えぇぇ、ここから引き返すのはつらいなぁ。行き先の科学館は入場無料だ。強行しよう。

私はどこから来て、どこへ行くのだろう(一文無し)


地図と測量の科学館。ここだ。

科学館ができる前、国土地理院の見学に行った親が「面白かった」と言ってたのが昭和時代だったから、40年越しくらいの参拝である。とうとうここまで来た。無一文だけど。


赤青の立体メガネで山々が飛び出す立体マップ……ごしに地下に埋め込まれた地球儀を望む。


そして、東日本大震災の爪痕がここにも……抽象的な再現だが。地球は動いているんだなぁ(地動説)。

来館者が自分の居住地をシールで示していくマップ(関東版)。他に、全国版とつくば市内版がある。ウチの近所に、ここまで来る者おらんかったわー。

屋外に再現された日本列島。あまりにもキャッチーで、シンボル的な展示なので、記念撮影する人のための日付表示まである。
さらにその外側には、「地球の直径を基準にして、角度1秒」分の距離を示す道標があり、地球の外周の1,296,000分の1を歩いてみることができる。

測量の歴史、ほぼ数学の歴史とイコール。

測量の三角点と水準点。日本各地に埋められた石柱、その中身。最新のレーザー測量だ、電子基準点だ、みたいなのが出てくる前から、こんな針の先の点を管理してたのね。

古地図のコーナー。東北地方が無茶苦茶小さい。白石に片倉小十郎、ということは江戸時代の初期か。福島-二本松-白河があって、郡山がない。まだ開発が進んでなかったということか。

「今日から伊能忠敬になれるセット」。楽しかっただろうなぁ。資材にも資金にも相当苦労したみたいだけど。

地図記号のコーナー。「老人ホーム」「風車」の図案って一般公募だったのね。
追加される記号の他、省略される記号もあって、世の関心に合わせて地図も変わっていくようすが見える。
それまで省略されていた「畑」が記号化されるみたいな変化もある。農地の減少により、ありふれたものがランドマークになったのだろうか。

館内の売店・自販機は電子マネーに対応している。ホッと一息。
売店は施設のミュージアムショップというより、「日本地図センター」の支店らしい。

ここで測量野帳売ったら面白いだろう……というより、国土地理院銘入りのがあるはず、くらいの思いでいたが、残念ながらラインナップには入っていなかった。他の商品が十分以上に面白いけど。

学生時代は歴史も地理もぜんぜん興味が無かったけど、ご近所ネタを掘り起こすのが楽しいので、最近はそういう施設でそういうグッズを探すのが習慣になっているなぁ。


国立科学博物館・筑波実験植物園


歩いて30分くらいの距離にあったので、歩く(直通のバス路線がない)。昼ご飯食べなければ一回りくらいできそうだという安直な見積もりをもとに。

最近、国立科学博物館(『かはく』)の上野本館とか白金台の自然教育園には何度か行っているが、ここだけ未踏の地だったのだ。


ここは有料の施設である。だが、ここに限っては無一文でも入場できる。かはくのリピーターズパスを持ち歩いているからである。(もっぱら、自然教育園用)

実験植物園と自然教育園というラベルの違いは入ってみればわかる。「放置」をそもそもの存在意義として持っている自然教育園に対し、実験植物園の中は外から持ち込まれた植物に満ち、道はアスファルトで舗装され、むしろ公園のように整備されているのだ。

植物の名前とか、ほとんど記憶ないが、ここで自分の無知を恥じることはない。そもそも人間が記憶できる情報量ではないからだ。絶滅危惧種どころか、中には野生絶滅した種までカジュアルに植えられていて、ギョッとさせられる。

なんでもありの場所ではない。ダイエット中の植物への差し入れは禁止。
とはいえ、自然教育園と違い「ここから先に行くと帰って来れなくなります」「人間の世界、ここまで」的なヤバさはない。

自然教育園の「おろちの松」ほどの大木ではないが、こっちにもあった。腐朽経過観察中の樹木。

昆虫採集禁止の園内で見かけたペットボトル罠。害虫駆除のためにスタッフが仕掛けたものだろうか。

建物の外観を撮影していないが、敷地内には「自然史標本棟」があって、1階に見学スペースがある。柱に見覚えのあるパネルが貼られていた。『へんなものみっけ』の扉絵だったような気がする。過去のコラボ企画の痕跡だろうか。

かはくで展示されている標本の数は10,000点。しかし、バックヤードに保管されている標本数は440万点を超える(と書いてあった)。
しかし、かはくの標本収集にかける情熱は留まることがない。新しい収蔵庫が既に建設中だ。全国各地の博物館が保管スペースと人件費にあえいでいる中、贅沢だなぁと思わないでもないが、しかし、この収蔵庫の保管資料は、それら博物館への貸し出しに備えて保管されるものでもある。

水性植物温室の中にある水槽。魚が泳いでいるが、あくまで植物が主役。


しかし、詰め込んだなぁ。


1mmに満たない、超小型のサトイモ、ミジンコウキクサ。

そして世界最大の花を咲かせるサトイモ。ショクダイオオコンニャクの花(実寸大模型)と本物。模型は上野本館の特別展「植物」で展示されていたものだ。

これも見覚えがある。ここ実験植物園で掘り起こされて、特別展「植物」で展示されたものが、里帰りしたのだ。

多目的温室。温室なのに多目的ってなんだ?と思ったら、様々な植物とともにベンチやテーブルなどの家具が並んでいて休憩できるスペースになっていた。(飲食は不可のはず)
きっと、ここで行われるイベントもあるのだろう。

えっ、こちらのかた、生きてらっしゃるんですか?(サルオガセモドキ)

熱帯雨林温室。建物の大きさと、所々にあるインテリアに、かつて渋谷区にあった「ふれあい植物センター」を思い出す。良い場所だったんだがなあ。

実験植物園の中にあった、飲料の自販機は交通系電子マネー対応。ただし、ミュージアムショップは現金決済のみ。残念!ただ、商品は自然教育園のものとあまり変わらないラインナップだった。

地図と測量の科学館になかった、測量野帳はこちらで売っていた。「かはくフィールドノート」と呼ばれるオレンジの測量野帳(SKETCH)だ。


TXつくば駅に行ったら、駅の構内に茨城県のおみやげショップがあった。千葉県で茨城県のおみやげを売るのか、これは珍しい、と覗いてみた。

つくば市が千葉県ではなく、茨城県だと知るのは帰りの電車に乗る直前、Googleマップで経路検索をしたときだった。意外に近かったな、茨城県。

2022年11月6日日曜日

相模川

そもそものきっかけは、ここ。相模川ふれあい科学館
魚道の展示コーナーがあって、相模川にある魚道の数々が示されている。

そろそろ実物を……と思いつつ、暑いのは嫌だし寒いのも嫌だし……で、「まぁ、秋になったら」くらいの時期感で見ていた。
夏が終わったと思ったら、いきなり冬の気配が訪れたので、雪が降り始めないうちに見に行く。


相模線 社家(しゃけ)駅。決して難読というわけではないが、何度も読み間違えそうな地名だ。ここから相模川に向かう。

相模大堰。多摩川の堰も見た事あるけど、ここはひときわ大きさが際立つなぁ。
ゲート室がガラス張りだ。

管理橋は近年、一般に開放されていて、間近からとは言わずともゲート室とその中にあるゲート巻上機を透かし見ることができる。

左岸の魚道の上流側を見たところ。おそらく中央の広めの主魚道がアイスハーバー式魚道。脇の副魚道はハーフコーン式っぽい。

魚道の下流側。盛大に水があふれ出している。比較的大きい、あるいは元気な魚に「こちらに泳ぎやすいところアリ〼」とお知らせする「呼び水」というものらしい。

右岸側。フラップゲートが上がって水をせき止めており、こちらは休業中らしい。点検・清掃等に備えてのものだろうか。

後で知ったが、相模大堰の魚道には覗き窓があり、時期によっては公開され、見せてもらうこともできるようだ。水族館ではないから、魚が通るところを必ず見られるわけではないのだろうが。


相模大堰のすぐ東は首都高。高架の下は柵で覆われているが、その中に普段は立ち入れない謎のビオトープが。説明書きがあるので、一般公開日とかのイベントはありそう。(神奈川県内広域水道企業団 社家取水管理事務所の敷地)

見たいものは見た。そんな感じになったので、相模線で次の目的地へ。寒川駅から相模線沿いに歩く。子どもの頃から単線の線路を見ないで育ったので、相模線とか実際以上に田舎を感じてしまう。(列車の本数は相模線は少なくない)

寒川取水堰。こちらには管理橋がないので、下を覗くことはできない。最寄りの橋、下流にある神川橋から。

両脇にあった相模大堰と異なり、こちらの魚道は真ん中に設置されているので、一層近寄りがたい。魚道の周りには、溯上する魚を狙ってたくさんの水鳥が集まっている。

左から、舟通しデニール式魚道、呼び水水路、階段式魚道。

寒川取水堰の左岸側には「川とのふれあい公園」がある。せせらぎとため池みたいなものもあるが、水源が止まっており、今ため池に残っているのは雨水のようだ。

晴れていたら、「ここから富士山が見える」はずだったスポット。「相模川八景 寒川宮山の富士」。

取水堰の概要の説明板も公園内に設置されている。

ダムと違って、下流の堰は平地にあるので、坂道が少なくて助かるなぁ。こっちももっと開拓しよう。


ちょっと東にあるいたところに、神奈川県水道記念館。県営水道の始まりの地、最初のポンプ所の建物を改装したかっこいい建物だ。

記念館自体の展示はコロナで休止中。ただし、休憩スペースとして利用が可能なので、建物に入って、ダムカードをもらうことはできる。寒川取水堰にはダムカードがある!ダムじゃないのに!(むしろ、なぜ相模大堰にはダムカードがないのだろう……)


河童の鎮座する噴水、近辺の自治体から寄贈された木々が植えられた庭のせせらぎなど、屋外も素晴らしい。
記念館自体が休業しているのに、散歩に来ている客がいるくらいだ。

神奈川県の水道の始まりの地であることを示す石碑。葉山が皇族の別荘地になったんでカッコいいところを見せたい、みたいな文言。上野恩賜公園とか、色々なところで間接的に恩恵を受けてるなあ。(まぁ、原資は税金なんだけど)

こうなると展示部分も見てみたいな。遊具っぽいのはともかく、2階の水源探検ゾーンが気になる。東京都の水の科学館も、そっちが面白かったし。


寒川市観光協会にて。いや、わからんからね。梶原景時とか。(この中の誰かが景時なのか)
『鎌倉殿』観てなかったからなぁ。