2011年7月8日金曜日

今日見つけたすごい本

たまには図書館でコンピュータの本でも読むかと、たまたま手に取った本がすごかった。色々と思い出したり考えたことがあったので吐き出してみる。

会計システムモデル 著:阿部錠輔/鈴木茂 同友社
一応Amazonのリンク貼るけど、もう取り扱ってないよ。

1996年の発行。かなり古い本だ。世はWindows3.1からWindows95への移行期。ページによってスクリーンショットがWin3.1版だったり、Win95版だったりする。

当時の自分はといえば入社2年目くらいで、先輩達がVisualBasicでアプリの画面を作るのを横目で見つつ、自分はUNIX向けCOBOLのマニュアルの(十数冊あるそれらのうちどれが昼寝の枕に一番いいか、とっかえひっかえしながら)目次を暗記していた。(サーバー機能担当だった)。その一方でユーザー向けのマニュアル(を目指して書いた紙の束)を書いていた。テクニカルライターみたいなのに憧れていたので、とても楽しい仕事だった。

なんでこんな思い出話になるのかというと、なんとなく自分の黒歴史を紐解いているような気分になったからだ。読み始めてすぐ「これは悪い見本になりそうだ。この本をもとに『やってはいけないリスト』が作れるのではないか」とメモを取り始めたくらいだ。


----- ここから愚痴 -----


何を書いている本なのか説明されていない。

タイトルから漠然と『会計システムのモデルのあるべき姿を示した』とか『その一例を挙げよう』的な本を想像していたのだが、本書はいきなりソフトウェアのインストール手順から始まっている。しかも本にCD-ROMが付属していることもなく、著者が作成したソフトウェアを巻末の申込書を使って購入するのである。価格は2万円~3万円。では、そのプログラムの説明書なのかというと、そういう書き方にもなっていない。


対象読者の想定が示されていない。

対象の読者はこのソフトウェアのユーザーなのか、会計のシステム一般について学びたい者なのか。この本を読むに当たってWindowsの操作に習熟している必要があるのか、VisualBasic自体の知識が必要なのか必要ないのか。

TABキーを押すと次の項目に移動できます的な説明とソフトウェアを構成するプログラムソースの説明が交互に出てくる。


対象業務の説明がない。

そもそも何をするシステムなのか。このようなインプットから、このようなアウトプットを作るのである的な情報が無い。もしかしたら、この辺りの知識は会計に係わる者なら知っていて当然だという意識かもしれない。でも「会計業務全体のうち、この範囲をシステム化します」というスコープも明示されていない。(「この機能は作らなかった」という説明はあった。)

業務モデル、データモデルの説明がなく、いきなり実装(ファイル名、データのレイアウト)の説明から始まる。

「○○をするには××せよ」という説明がなく、「××したら○○になります」という説明が多い。


やたら枝葉から枝葉に飛ぶ。

「○○の情報は××ファイルに作ります。ところでWindowsのファイル形式にはシーケンシャルファイルと……があります。」

一般論と個別論がバラバラ。会計用語とコンピュータ用語が無秩序に出てくる。説明のレベルの粒が揃っていない。


とても力が入った力作ということは感じられた。いい意味でも悪い意味でも書き手の苦労が伝わってくる。紙面に余裕があれば全ソースを掲載して説明したかった的なことも書かれていた。きっと、色々な相手に色々なことを伝えようとして、付け足しに付け足しを重ねてこうなったのだろう。


----- ここから黒歴史 -----


当時は書店のコンピュータ書と言えば、Officeの入門書や開発言語の書籍が多くて、テストのやり方とかユーザー向けマニュアルの書き方のような、むしろ職業エンジニアが必要とする、あるいはそのような者でなければ読まないような本が見当たらなくて困った記憶がある。

テストのやり方は会社で先輩から教わるものという認識だったし、マニュアルに至っては書き方を教えてくれる人もいなくて、自分であーだこーだと考えながら書いては顧客や上司にダメを出されながら試行錯誤していた。

GUIの標準化もまだまだだった。そもそもデザインや挙動が標準化されていないと使う人が困るのだと意識している人が少なかった。やたら色とりどりの画面がディスプレイを飾っていた。さすがに「チェックボックスかオプションボタンか、並べてみてカッコいい方を使う」とまで言い張る人はいなかったが。でもWindows版OASYSの起動画面でオプションボタンが実行ボタン代わりに使われているのを見たときに受けた、そのショックは未だに忘れられない。

データ指向設計みたいな言葉も知らなかった。こういう情報をメンテするための機能を作るという意識はなかった。機能と機能の間で受け渡すくらいの気持ち。もしかしたら言葉自体まだなかったかもしれないが。


テクニカルライター的な職業には実際にはつかなかったけど、今はブログなりwikiサイトなりに、ちょっとしたことを気楽に書けるようになったし、こういう風に書くべきみたいな指南やサンプルもたくさん見つけられて、いい時代になったよなぁ。実際の文章力がそれに伴ってアップしたとかはないだろうけど。紙の本みたいに、テーマに沿った内容をそれなりのボリュームで用意する必要がないというのがありがたい。あと、需要が期待できなくても形にできる。これがもっとありがたい。


----- ここからまた次の黒歴史 -----

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