2013年8月27日火曜日

社会を良くするには、まず子供の教育から

……って意見がよく分からない。分からないので、端緒として、まず「どのように分からないのか」をブレークダウンするべく、仮説を2つほど立ててみた。
仮説なので、近日のうちにも、遠い将来においても内容も結論もコロコロ変わりうる。そういう種類の文章であることを予めお断りしておく。

1. 現時点での解決をあきらめているという仮説

社会問題として提示されている事柄について、選挙権も経済力も持たない、行動力で大人に劣るはずの子供に希望を託すということはどのような了見であろう。私が想像するに、これは「状況を改善する知恵は、今の我々にはない。そこで、正しい問題意識を身に付けさせた子供が大人になるであろう未来まで先送りにする」ということの言い換えである。
特に、他の対策の補足としてではなく、開口一番にこれを言い出す人については当てはまりそうな気がする。(気がするだけで残念ながら根拠はない)
問題のありどころが分からないまま、「なんとかしなければならない。今何か手を打たないといけない」と焦っている人もいるかもしれない。もしかしたら「この問題は待ったなしの喫緊の課題として、将来の世代に解決を託す」という論述に疑問を感じない人もいるのかもしれない。

2. 子供であれば操縦可能と考えているという仮説

他に思いつくことも無いから心がけを変えるしかない、という結論を一旦アリとする。
しかし、そこで自分たち世代(今、社会を運営している当事者である)の意識を変えるではなく、子供の教育を変えることを手段とするのはどういうことなのだろうか。
心がけの問題なのに、自分の意識を変えるつもりもなければ、同世代の他の大人を説得するのもあきらめたということか。
ここで教育と言われているのは、その領域に精通する専門家を育てろという主張であるかもしれない。が、その場合は、どのような学問領域に、どのような期待をかけているのかが併せて言及されているべきであろう。



大人を説得できない道理で、子供を教育可能であるとされるのはなぜか。社会の成員として、どのような人物像が望まれているか、社会の側から提示できるからである。望まれる人物像の提示は大人に対しても可能だろうと思うが、子供は学校・家庭・地域などに縛られている度合いが大人より高い。であるから、むしろ、望ましくない考え方を排除するのに都合が良いと考えることはできるだろう。
ただし、上に挙げた教育の主体(学校・家庭・地域)のそれぞれの望みが一致していない場合、子供たちは相手によってそれぞれ異なる人物像を演じることを強いられるし、その間の相違が過ぎれば子供自身の人格が破綻しかねない。
この不幸を防ぐには、教育の主体の間で意見の統合を図るのが良いと思われる。が、残念なことに彼らの実体は既に互いの説得をあきらめて、それゆえに子供の教育に活路を見いだそうとしている大人である。積極的に不幸を防ぐ努力は見込めず、文字通りの意味で幸運を祈るしかない。
この不幸を防ぐことができなかった場合、子供としては、自らの判断で特定の教育主体を選ぶか、あるいはどの教育主体に対しても面従腹背の態度を取ることでなんとか人格の破綻を防ぐという戦略をとるしかない。それは将来‘ロクな大人になる’ことをあきらめることを意味するのかもしれないが。

2013年8月10日土曜日

[美談] 数万人を救った、いのちの声

ただ自らの命を惜しんだだけの叫び声が、数万人の人々の命を救うこともある。これはそんなお話です。

その人の名はグレムト・ゲール。大ガミラス帝星銀河方面作戦副司令官です。
いきなりこう言うのもなんですが、軍人としての彼の評判は決して芳しいものではなく、日和見主義者、下品で卑屈な男というのが衆目の一致するところです。彼の実際の行動も、部下の戦功を横取りしたり、ピンチに陥った味方を見捨てて逃げるなど、ロクでもないことばかりでした。

運命の日は唐突に訪れました。時の軍総監、ヘルム・ゼーリック国家元帥が一万隻以上の大艦隊を動員し、自由浮遊惑星バランで観艦式を行ったのです。
そこでゼーリックが告げたのは大ガミラスの臣民からの敬愛を一身に受ける総統、アベルト・デスラーの暗殺でした。
呆然とする将兵。そこに、2発目の爆弾が投げ込まれます。辺境の惑星、テロンの戦艦が単艦で、よりにもよって大ガミラスの大艦隊に殴り込みをかけてきたのです。惑星バランは、まるでドラえもんの工場にネズミが投げ込まれたような阿鼻叫喚に包まれました。同士討ちを避けようとする艦があれば、その一方には味方に犠牲を出してでも敵を撃退せよと言い放つ上司。将兵の混乱と緊張はもう限界です。
しかし、運命の手は容赦を知りません。朗らかな笑い声とともに3発目の爆弾が投げ込まれました。声の主はデスラー総統その人。暗殺が未然に防がれたこと、首謀者が他ならぬゼーリックであることを得意げに指摘します。が、中央の事情に通じた者ならいざ知らず、この場にいる将兵の多くはたった今総統の死を知らされたばかり。もうワケが分かりません。

「逆賊め」

総統の生存。上司の叛意とその頓挫。ましてやゲール自身は総統に何ら含むところはありません。むしろ総統大好きと言ってもいい。ここでゼーリックを撃たなければ、他ならぬ彼自身が逆賊の一味とみなされかねません。そんなことがあってはならない。何よりも大切な自らの保身を願う、心からの行動です。しかし、程度の差こそあれ、この状況はこの場の皆が共有するものであり、ゲールの一途さがこの混乱した状況に一定の方向性を与えていきます。

ゼーリックの命により撃沈されたはずのヤマト。その復活の報告もゲールに対して行われます。この場で主導権を握っているのは誰か。誰の指示に従って行動すべきなのか、それが明らかになった瞬間であります。

「てっ、撤退!直ちに現宙域を離脱しろぉっ!」

この場に集ったガミラスの将兵は、もちろん波動砲の脅威を目にしたことはなく、その結果惑星バランがどうなるかなど想像したこともありません。しかし、ゲールの恐怖に満ちた叫びと、明快な指示が彼らに適切な行動を取らせ、彼ら自身の命を救うことになります。


お偉いさんの気まぐれの観艦式のはずが、突如、本国まで90日という遙かな遠方に理不尽にも追いやられてしまったガミラス将兵。そして、意図せず、大艦隊を指揮することになったゲール。
飢えと渇き、宇宙の難所、部下の反乱、セクハラ疑惑……。様々な困難がゲールと彼に従う大艦隊に訪れることでしょう。
長征10万光年。ゆきて帰りし物語。帰ろう、あの日常へ。もっとも長い90日間の始まりです。

そのゲールを演じるのは広瀬正志。かつては『機動戦士ガンダム』のランバ・ラル、近くは『Fate/Zero』の言峰璃正。少年達に‘大人であること’その意味を叩き込んできた、ベテラン声優であります。