2020年11月8日日曜日

溝ノ口太陽族

『天体戦士サンレッド』の聖地、溝ノ口に来てみた。
伝説的なOP「溝ノ口太陽族」の歌詞にもうたわれていた駅前ロータリーは2つあった。どっちなんだろう。


さて、今回の外出の目的地はこの中にある。


溝ノ口、という地名の指し示すものを予感させるような道。というか蓋。自動車やバイクのような「重量物」はお断り。そんな感じの道を、そのまま歩き続けると、そのうち水の流れも見えてきた。分かりやすい。


今日の目的地に到着。

この、極端に装飾性を欠いた、ひたすら地味な噴水。久地円筒分水である。
駅からの道程のところどころに、ここの所在を告げる看板があった。ここは結構人気のスポットなのだ。
実際、自分の他にもスマホの画面を確かめながら、同じ方向に歩いていた他の「客」の姿をみかけた。中には、紙に印刷された略地図を持ったグループさえあった。

きっかけはカワスイで購入したこの本。

橋とか堰とかが連なる中に、ヘンテコな形の施設があったので見に行ってみたくなったのだ。

この施設はもちろん、噴水を作ろうとして失敗したものではなく、れっきとした実用品だ。農業用水(二ヶ領用水)を川崎各地の農地に公平に配るための工夫である。
真ん中の小さな円から360度、均一に流れる水を、円グラフのように予め決めたとおりの割合で分割するのである。分割線となる外側の仕切りの壁は等分ではなく、各地の農地の広さをもとに定められたという。

そんな円筒分水も、今ではみんなの憩いの場。ソーシャル・ディスタンスにも、みんな慣れた頃だし、そろそろワールド・ディスタンスへのステップアップを考えてもいい頃だ。互いに世界一つ分の距離を取ろう。


左奥の茶色い網がかかっているところが二ヶ領用水からの水を取り込んでいるところ。手前には平瀬川が流れており、その下を横切って円筒分水に水が送り込まれるのだ。は?川の下を横切る?その水、分水の上から吹き出すんでしょ?
分水が作られたのは昭和41年、太平洋戦争開戦の年だ。そんなご時世にポンプを動かす費用のことを想像して、気が遠くなりかけた。が、サイフォンの原理で水が流れるので、それ自体に動力は不要らしい。

このマンガがなかったら死んでた。危ないところだった。


竣成記念の写真に移っているのは行政・工事関係者だろうか。ケーキをきれいに切り分けられる男たち。


このホールケーキのような分水が出来る前は、用水路そのものを分割する形で水を分けていたらしい。真ん中か端か、場所によって水の流れにむらがあり、いわばショートケーキにイチゴが1つという状態だったので、激しい水争いが行われてきたのだという。要人襲撃とか。他の村の者に流量を勝手に変えられないよう、互いに昼夜見張り合うみたいなこともやってたらしい。公平や平等の難しさ厳しさは昔も今も皆の悩みの種だ。特に、それが生存そのものに関わる事項とあっては。


用水の上流に。奥のは魚道だろうか。


用水から一旦離れ、南下して、次の目的地。
東高根森林公園だ。

竹林にシラカシ林に湿性植物園。
軽い気持ちで行ってみたら、想像以上の規模だった。しかも、その高低差。園内に「見晴台」とか。そんな疲れそうな場所があると予め知ってたら「日を改めて」としていたのに。


古代芝生広場。「古代」ときた。弥生時代の遺跡だったらしい。夢見ヶ崎動物公園でも見かけたが、川崎市は遺跡を公園に転用するのが好きみたいだ。(子供に踏みつけにさせているとも言う)


古代植物園!そんなものもあるのか。

別に「失われてしまった幻の植物」というファンタジーに満ちあふれたものではなく、昔から人間に重宝されてきた植物を集めた場所だ。しかし、やはり「古代」という言葉のパワーがスゴい。相模原や角田でも「宇宙植物園」とか、やればいいのに。


件の見晴台。


今日は北から入ったが、正門は南にある。こちらから入ったら、また違った景色になるのだろうか。


さて、お次は。

用水路っぽいところを歩いてきたつもりが、道を間違えていた。というか、操作ミスでGoogleMapの目的地が変わってしまっていた。
用水路っぽい道を選んで、用水路関係のスポットを回るのだから気付きにくいミスではある。
例えば、橋の上流(開)→下流(閉)みたいな。

実際の所、日本全体ではさほど珍しい風景ではないのだろうけど。首都圏での暮らしに慣れたせいか、地面の下を透かしてみる感じが珍しいのだ。


次の目的地、川崎市緑化センター。

立体花壇。ちょっとした植物園みたいな場所だ。
敷地の中に、二ヶ領用水が流れている感じの立地。「植物園」ではなく「緑化センター」なのは、単に植物を見せる場所ではなく、栽培の相談・指導など、市内の緑化の推進を仕事としているからだ。


温室もあり。


みんな大好き、食虫植物のコーナー。


こういう場所を楽しい、とは思っても。中でゆったり時間を過ごそう、となかなかならないのが自分の良くないところだ。「見たかったものを見れた」となったら、次に意識が向いてしまうのだ。
最後の目的地に向かって、二ヶ領用水の上流へ向かう。GoogleMapが最短経路を教えてくれるが、せっかくだから、用水をそのままたどる。


コイのような魚がいた。


カモのような鳥がいた。


よくわからない白い鳥もいた。


本日、一番の難所。上に通るのは南武線(登戸-宿河原)。首都圏を走る鉄道の下をかがんでくぐるのだ。これは怖かった。身体が鉄で出来ている者はわざわざ列車が走るタイミングで下に入るのだろう。

後で南武線に乗って見た。一瞬だった。後で入手した散策マップでもここは取り上げられていた。


割とあちこちに、案内板がある。下に用水の全体像が。


最後の目的地。二ヶ領せせらぎ館。

水族館ではないが、水槽が並んでいて、きっと実際にその辺で捉えたのであろう、水族が飼育されている。
水辺の植物とかも展示されてはいるが、展示目的の施設ではなく、多摩川や二ヶ領用水など近隣の自然と歴史を活かしたイベント開催のベースであるみたい。
実際、今日もここを出発地とするウォーキングのイベントが行われていた。円筒分水あたりで見かけた地図を持ったグループも、このイベントの参加者だったのかもしれない。


せせらぎ館を出たところは、もう多摩川。二ヶ領宿河原堰と、用水の取水口が見える。
多摩川の向こう側には、東京都狛江市。私の住む大田区を潤していた六郷用水の取水口もこの近辺にあるはずだ。

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