「福島原発事故以降」とタイトルにはあるが、原発事故について語っている第一章は全体の5分の2ほど。残りは新聞に連載された著者の半生を再構成した第二章。
著者は研究者として諸々の公害問題・環境リスクに取り組んできた人。彼女がこれまでの人生の中で得てきたものを総括しつつ、さらに震災とそれに伴う原発事故という経験を経て、どういう視点で放射線のリスクを捉えるべきかを論じている。
- 化学物質のリスク評価法で放射線のリスクを見るとどうなるか。
- 年間1ミリシーベルトという数字は誰がどうやって出したのか。
- 彼女のがんのリスクに対する考え方。それがどのように変わったか。
- 今、どのような研究に取り組んでいるか。
自分が読んでまず驚いたのは、よく分からないと強調されている、低線量被曝の影響について。それでも大抵の化学物質よりはデータが揃っているのだということ。では、データが少ない場合にどのように判断するか。そこに彼女の取り組みがある。
ニュースを丹念に追っている人なら、個々の事例や議論は聞いたことのあることばかりかもしれない。この本では、それらをリスク評価の専門家の視点で整理するとこうなりますよ、というのがわかりやすく示されている。
不安にかられて情報を集めてはいるものの…という人向け。その前に、そもそも彼女自身が信頼できる人なのか…っていう方は第二章も読んで。
0 件のコメント:
コメントを投稿