2016年8月3日水曜日

パックスパミール

アフガニスタンを巡る、イギリスとロシアの両帝国の抗争を題材とした、政略ゲーム。
19世紀頃に実際にあった抗争がモデルとのこと。

グレート・ゲーム(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/グレート・ゲーム

それではプレイした感想を……といきたいところなんだけど、当日持ち込まれたこのゲームのルールを誰も理解できず、原著、翻訳のルールブックを1時間ほど取っ替え引っ替えした挙げ句のギブアップとなった。屈辱である。

そもそもゲームのゴールが何なのかを理解するのに30分以上かかった。
そのゴールに到達するためにプレイヤーが行えるアクションを読むのに30分以上かかった。
ゲームのゴールを目指すとして、それぞれのアクションの効果がどうゴールに結びつくのかを理解……できなかった。

プレイヤーは商取引を行うことができます。 うん、それで?
プレイヤーは愛国者の買収を試みることができます。 よかったね!

仕事柄、説明文の読み書きを日常生活の一部としているプレイヤー達による批判合戦が始まった。

とにかく、ルールブック、カード類の設計が甘いと思われた。人間の読解力、想像力に頼りすぎだ。

翻訳版のルールブックに関しては、用語の表記が日本語、カタカナ、原文が混在していて、それらの対応付けに苦労するハメになった。
専用カードを使うゲームなので、(当日初めて目にする)複数の種類のカードを、ルールに合わせて使い分ける必要がある。都市、イベント、人物、抗争のテーマ……これらはテーブル上での配置場所からして違うのだが、たまたま手に取ったカードが、説明書の中に書かれているどの種類のカードに当たるのかがわからない。カード自体は英語表記なのだが、翻訳版の説明は日本語で書かれている。で、翻訳版の説明書をまず読んで、原著のルールブックの相当箇所から原文の英語表記を確認して、カードを特定するという手間を取ることになった。翻訳版からの類推だけでまかなおうとすると、どうしても勝手読みを行ってしまうのだ。
「カードが見つからない」
「何のカード?」
「それ、さっき別のカードだと思ってプレイヤーに配ったヤツだ!探せ!」

また、こちらは原著のルールブックの欠点そのままなのだが、導入もソコソコに、個別のアクションの説明(しかも多い!)に突入している。
アクションには通常アクションと特別アクションの2種類があります。 ……その2つを区別することにいったい何の意味が?
結果、我々はゲームの目的が、経済的な成功なのか、人気取りなのか、戦争での勝利なのかを理解できぬまま、最初に行うべきアクション、「とりあえずビール」を求めてルールブックの節節をぐるぐるさまようこととなった。

導入から、ゲームの目的、プレイ中に取れるアクションの説明、史実の解説、用語集。一般的なルールブックの体裁を取ってはいる。が、ルールを全部把握しないと最初の一歩すら踏み出せないというのは社会人カジュアルゲーマーには辛すぎる。時間を……返して……

カードに書かれている情報にも不満がある。細かい図説が複数書かれているのだが、なにか見落とした情報があるのではと読んでみたら、ルールブックに書かれていることの引き写し。カードみたいな小さい媒体には、そのカードに固有の情報だけを大きく書くべきだ。

カードをテーブルに並べる際のルールも多すぎる。複雑さを抑えられないのであれば、広いボードを用意して、そのガイドに沿ってカードを並べさせるべきだ。
また、手札として配るべきカードとテーブルにしか配置されないカードは、それぞれ大きさや形を変えて、混在できないようにするべきだ。
兵士や民衆を示すコマは、無意味な円柱や立方体ではなく、そのような形をした人形であるべきだ。

それを言っちゃあ、という気がしないでもないが、そもそもカードゲームであるべきではなかった。道具立て全体のスケールを上げて、プレイヤーに相応の場所と時間の確保を要求し、その分をプレイヤーの理解を助ける工夫と雰囲気作りに使った方がよほどいい。

UIとかUXを考えるときの、良い反面教師が見つかった。
こういうのを見つけてしまうと、自分でルールブック書きたくなるよね。

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