2021年2月21日日曜日

県境を越えて

過去10年以上に渡って、町田市民であった者として、「町田の川」と認識している川が三本ある。1本目は市の北側を流れ、市の大部分をその流域に収めている鶴見川。2本目は本来の「町田村」にあたる本町田からJR横浜線と並行する恩田川。そして東京都と神奈川県の境目の基準であった、その名も「境川」である。

境川は町田市西端の相原地区から流れ始め、市の南側の線を構成し、鶴間の南端から神奈川県を縦断して江ノ島に流れていく。

その境川の名を冠した遊水池が神奈川県にあり、その至近には可動堰があるという。これは見に行かなくてはと思っていた。なにしろ元町田市民なので。

遊水池は湘南台駅から行くのが近そうだった。町田市民として現役であればもちろん小田急江ノ島線から行くのだが、大田区から出発せねばならないので横浜から相鉄線。


初めて訪れた湘南台はまるで異国であった。

「文化センター」?これが湘南の文化なのか。奇っ怪な!


路上に突如現われた謎の構造物……は、横浜市営地下鉄ブルーラインを地下にあるホームへと導き入れるためのもの。さらにその下には相鉄いずみ野線が通っている。(なぜ地下鉄の方が上を走っているのか?)


様々な疑問を抱きつつも、しばらく歩いて、境川遊水池公園に到着。密です!

スポーツに興じる少年達。水際で遊ぶ家族連れ。サイクリング中のおじさん達。望遠レンズ完全装備で水鳥を狙うお年寄り。


境川遊水池公園は、境川の川岸に設けられた3つの遊水池の上面を利用して整備された公園だ。広大な土地が余っている場所にしばしば設けられる野球、サッカーのグラウンドなど。あと、ビオトープに野生生物を招き入れたりもしているようだ。せっかくの水際なので。


境川を見に来たので、境川。

先ほど、路面の怪しい構造物として登場した地下鉄の高架(手前)と相鉄線の高架(奥)。手前を流れているのが境川。ここを上流(奥)に遡れば、町田駅前にたどり着くのだ。

海からここまで12km。後者の写真、遊水池が並行してあるので、写真では分かりにくいが、右側の狭い方が境川で下流(奥)に進めば、その先は新江ノ島水族館だ。

その江ノ島には、都民が殺到して地元の人たちの顰蹙を買っているということを伝え聞いているので、私自身は自粛中。(今いるこの場所も同じ藤沢市なのだが)

なお、境川の東側は藤沢市、西側は横浜市。境川はその名を裏切らない働きをここでも続けている。


南北方向に長いこの公園を、東西方向に橋が貫いている。鷺舞橋だ。引き絞られた弓のように湾曲した橋を、弦のようなワイヤーと矢のような鉄柱が支えている。片面吊り構造という、珍しい形の橋。私は初めて見た。川は一方向に流れるので、曲線にすることにメリットがあるらしい。


ビオトープ。期待して見に来たわけではないが、春の訪れがまだなので、全体的に茶色い。

ほう、ここではワニガメ(定着予防外来種)を飼育して……いるのではなく。捨てられ、住み着いてしまった彼らと地元民の間のトラブルを防止するための看板だ。


この辺の様相は、田舎の川の土手と大して変わらない。川が洪水であふれれば流されてしまう点も含めて。ただ、せっかくのビオトープに砂泥が流れ込まないような工夫はされていた。


公園の情報センター。

蛍光灯の交換もおざなりな、薄暗い施設を予想していたのだけど、金も手間も十分以上にかけて整備されていた。その上で手作り感ある追加展示や休憩コーナーもあって、居心地が良い。物販もある。


地層の剥ぎ取り標本。見上げないと、それこそ「海の底」の部分しか見えない。


建設前のこの土地の航空写真と現在の比較。以前は農地だったのだ。


あまり動きのある場所がなく、寂しくなって撮った水槽。境川やビオトープの生き物を捕まえてきたもののようだ。観察会みたいな催しの副産物だろうか。


おっと、可動堰を見に来たのだった。俣野堰は情報センターのすぐ傍にある。
俣野堰は川の流れを止めたいときに、ゴム製の風船を空気で膨らませて川を塞ぐ、というタイプの堰だ。

川底に、川を横断するように、黒い部分がある。今は「全部流す」モードで、ペチャンコだ。農業用水の取得などの目的で、水をせき止めて水面を上げたい時期だけ、ポンプ等で空気を送り込んでダムのような形に膨らませるのだ。


遊水地内の水を川に戻すための水門(複数あるうちの1つ)や、境川の東から流れてくる和泉川との合流地点もすぐそばにある。

可動堰が動くところを見れなかったのはしょうがない。(年間でコントロールするようなもの?例外は増水時くらいだろうし)


目的も果たしたので、来るとき通らなかった道をたどって公園を出る。

川と遊水池を遮る堤の一部が切り取られたように低くなっているのが見える。増水時にここから川の水が遊水池に流れ込む、越流堤だ。往路でサイクリング用の道を歩いていたとき、まさに堤の上に橋があるのを不思議にも思わなかった。「『えつりゅうていばし』って、漢字でどう書くんだ?」と橋の名前に疑問を感じたくらいだ。橋の下はこうなっていたのだ。

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