2023年1月13日金曜日

地底の森ミュージアム

友人の厚意に甘える形で、仙台市郊外の園館をハシゴすることができた。

公共交通機関の網がある首都圏ならともかく、地方都市で園館をハシゴするというのは自力では考えにくい。むしろ、再入館を繰り返したり、周囲をグルグル歩き廻ったり、他の客が見向きしないスポットを探すほうに力を注ぐ。あるいは早々に帰宅して寝るとかだ。

私的交通機関に便乗させてもらい、最初に、一番行きたかった場所に行く。自分が県民だった頃はまだなかった施設「地底の森ミュージアム」だ。

うん、事前情報がなければ何の施設か全くわからない。知っていれば中にあるものが、とても陽光を嫌っていることが外観に現われているのだが。

入口にあるのは門松(!)。仙台城下で伝統的に飾られていたもの……と説明されていたが、明治期に姿を消した本当に古いもので、今ではほとんど見られないらしい。
市内の博物館等では展示を続けているらしいが、駅前商店街の初売りとかでも飾って欲しい。ハッタリの効いた、こういう門松で初売り客を迎えて欲しい。

これだ。これを見に来たのだ。

説明がなければ、処理を待つゴミの集積場にも見えるこの広いスペースが、この施設のメインの展示物だ。

これは、氷河期の森の跡を、そのまま保存しようという野心的な試みだ。
乱雑に散らかっている木材のようなものは、そもそもが自然の木であったものであり、幹や根が発掘された当時の配置のまま、ポリ…なんとかいうシリコン素材が染みこんだ、渇いた液浸標本ともいうべきものになっている。
歴史にも植物にも疎い私には、とても情報の密度が薄く感じられるこの部屋全体が、温度湿度管理を要する出土品の保管庫である。この場の維持のために費やされているであろう努力…主に水分との戦い…を想像すると気持ち悪い笑いがこみあげてくる。

奥の方には、この地を訪れた旧石器時代の狩人たちが囲んだたき火の跡がある。出土した石器、あるいは石器を削り出したあとの石片の配置など諸々から、狩人たちの役割分担やその日の収穫が無かったことまで分析されている。いやはや、ここまで来ると余計なお世話を越えてストーカーじみている。2万年という時を超えた今にいる。


情報の密度が薄そうに感じられるのは、第一印象だけの話。素人目にも面白そうと思える場所にはマーキングがしてあるし、時間経過によってライティングが変わり、スライドが上映され、狩人たちの様子を再現したビデオが上映される。

階段で地下から1階に上がると、もう少し普通の博物館っぽい場所になっている。ビデオで再現された狩人の様子が、どのような根拠で導かれたものなのか。推理ショーの種明かしだ。
石器を作りかた、石器の使いかたの各種ビデオ教材。石片の配置から、バラまいた犯人の行動を推測する手口の解説……。

狩人たちの追跡を逃れた鹿…の子孫たちの剥製。

遺跡の発掘調査に多大な貢献があったと噂される富沢博士。公にはあくまで架空の人物ということになっているが、果たして。

館の外では、氷河期の森が再現されている。とはいえ、現代は氷河期ではないので、当時の植生の再現には相当な苦労があるようだ。(今だと、北海道や樺太でしか生きていけない植物ばかりである)
ストップ温暖化。カムバック氷河期。次の氷河期までには、10万年単位の年月が必要らしいが。

ミュージアムショップこそないが、物販コーナーには「自分へのプレゼント」向けの販売物が各種ある。荷物になるような大物がないのがありがたい。
ハンドメイドっぽい品が多いので、買い逃しに注意。

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