2024年8月30日金曜日

幼魚水族館

水族館をハシゴしていく旅も3日目。


『ラブライブ』溢れる沼津から離れ、三島駅へ。そこからバスで「サントムーン柿田川」という商業施設に向かう。
(三島駅を最寄り駅と思っていたが、実際にはお隣の清水町だったようだ)

幼魚水族館。その名の通り、幼魚(あるいは仔魚)を専門に扱う水族館だ。成魚が全くいないわけではないが、その役割は幼魚との比較対象だ。


…と言いつつ、最初にツボに入ったのはタコの子ども。立派なクラーケンにおなり。

なんか人工物っぽい生き物がいるなぁと思ったら、カイカムリに綿の家が与えられたものだった。

幼魚水族館よ、お前もか。三島駅から全く姿を見かけなくなっていたので油断していたよ。
こういうコラボは、見慣れた展示の目先を変える作用もあるが、魚を見る時の邪魔になる事もあるので、多用されると辛くなる。特に、この館は館長のキャラクターが売りでもあるので、最初からコラボ企画が1本入っているようなものだ。
とはいえ、自分と同じタイミングで入館した老夫婦は特に気にした風もなかったので、私が弱すぎるだけなのかもしれない。

沼津の『ラブライブ』推しの何がそんなに気になっていたのか。
「これはアリ」となった数少ない掲示物の1つがこれ。
帰宅した今、分析している。思うに、掲示している側が、女の子全員の、公式のイラストを、無言であちこちに張り巡らせてくるところにあったのではないかと思っている。
当施設ではこの子を推してます!なぜなら社長の趣味だから!みたいな、ある意味偏ったメッセージが少なかった。自ら描いた、あるいは寄贈されたファンアートをほとんど見なかったのも気になっている。推している側の顔が見えないと不安になると知った。

ハナヒゲウツボ。成魚になると青くなるはずの魚が、実際に青くなるところを見たことが無かった。謎が解けた瞬間。この知見は「幼魚」を扱う水族館ならではのものだなぁ。

アニメだけではない、水産庁ともコラボ。アワビにウナギといった食用魚介の幼魚。
ウナギの幼魚は、いつか見たいと思っていたものだったので、ありがたい。

ここで育った幼魚は他の園館に行くのだという。

間近に競合の水族館がひしめく中、新鮮なコンセプトを掲げて立ち上がった館。館内の掲示物からは、生き物に対する目線も、それを表現する力も感じられた。
健やかに、長生きして欲しい。


ところで、サントムーン柿田川の近くには、柿田川公園がある。この暑さでなければ立ち寄ったのになぁ。

2024年8月29日木曜日

伊豆・三津シーパラダイス

歩道橋から見た「みとしー」。年季の入った、その姿。

この建物はしかし、建築業協会賞を受賞した、名建築である。

そのポイントは、橋のように、入り江を横切って渡されたプレハブの「主棟」であるという。現在は売店とキッズコーナー他に使われている。
これら入り江も一度埋め立てたものを掘り戻したという力の入りようだ。
(青幻社『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』)

入口すぐに海獣類コーナーがあり、海の生物、淡水魚、そして駿河湾の深海生物。定番と言えなくもない。が、むしろここは元祖・本家の少なくともどちらか片方を担っているくらいの老舗とのことで、日本初がゴロゴロ転がっている場所だ。

そう言えば「BAR どん底」って店がどっかのアニメに出てきたな、と思いながらタカアシガニに触る。今調べたら『ガルパン』だった。

水族館棟を出たところで、唐突にシロフクロウ氏と遭遇。他の生き物とチームを組んでる風でもなかった。中止された、あるいは未成立に終わった展示があったのかもしれない。

ペンギンに接近できるエリア「ペンパラ」。その注意書きは「ペンギンにイタズラしないでください」ではなく、「ペンギンに突かれないよう気をつけてください」だ。つまり、「手を出したらケガするのはオマエ」ということだ。この園、一番の危険区画。このときはそう思っていた。

イルカはプールだけでなく、入り江を囲って作られた自然プールで囲まれていて、ショーも両方で行われていた。坂東太郎(利根川)の名を持つ水神の使いが荒ぶるたびに客席に豪雨が降り注ぐ。とは言え、このとき空からも土砂降りの雨が降っていたので。

水神への生け贄として選ばれた子どもや若い女性が客席のコールや拍手とともに、まるでテロリストが用いる人質のように、プールに背を向けて並ばせられる。奇祭だ。しかもかなりヤバイ方の。
水神の使いが、先ほどの、ジャンプの余波とは比べものにならない量の水を浴びせかける。
(この写真、絵面が酷すぎるように思い、使うか否か躊躇した。真実を伝えたい思いが勝った)

パニックに陥った自分をなだめるように、再び水族館棟へ。淡水魚のコーナーの植栽の一部がワサビであることに気づく。

この園でも、エサやり体験がある。とはいえ、対象となる魚がマダイとブリで、与える餌もペレットなので、飼育というよりは養殖っぽい。雨が降っている中、わざわざそれに挑もうという物好きは私しかいなかった。

先ほどのプールでは、誰の指図を受けるでもなく、イルカがボールで遊んでいた。先ほどの坂東太郎ではなく、カマイルカのようだ。

ここにも『ラブライブ』が。まぁ、乗らないと損、くらいのビッグ・コンテンツではあるのだけど。

JAZAペンギン。こちらの方は口が開いており、賽銭箱としての機能を保っている。ただし、あわしまマリンパーク同様、こちらの園も日本動物園水族館協会の加盟館検索にかからなくなってしまったので、私の投じた硬貨の行方は不明だ。

「水族館」として見た時の完成度・充足度の高さなら、ここ。
公共交通機関頼りの自分には、ちゃんと食事が取れるレストランがあればなお良し。(でも、近所に飲食店も多そうだからなぁ)


あわしまマリンパーク、伊豆・三津シーパラダイスに近いという条件で探した宿、「浜の家」。古い建物を大事に使っている感じの旅館だ。
従業員みなさん高齢だが、館内Wifiあり、2階の食堂には『ラブライブ』グッズが溢れ(販売も)という感じで、若者相手に商売する意欲も高い。後者は近隣の宿泊業者が共同で行ったイベントの名残らしい。「今でもファンが訪れる」みたいな感じになってくれていればいいけど。

あわしまマリンパーク

沼津って、どこに行ってもこんな感じなんだろうか。

小魚に水鳥。水族館に入る前から、生物が目に入る。山頂の方を見れば、猛禽っぽい鳥も飛んでいる。

日本動物園水族館協会のペンギン。入口が塞がれていて賽銭箱としての機能はない。脱退して(近隣の他の水族館と同様に)日本水族館協会に参加したようだ。
すぐ傍に「くるくるコイン」が設置されているので、こちらに好きなだけコインを投入しよう。

一度閉園したものが営業再開という触れ込み通り、古い建物に一度開いた穴を埋めるように、スタッフ手作りの展示物が添えられている。

館内で一番大きい、「淡島の海」水槽。ぼんやり観覧したい人用の座席もスタッフも手作りだ。

私の一番のお気に入りは、この魚のいない植物だけの水槽。そう、私は魚ではなく、水族館を見に来たものだ。

水槽…を入れるスペースに再現された「駿河湾の深海」。水深100m~300mの範囲をギュッと凝縮してみせた模型だ。これだ、こういうものを見に来たのだ。

ウニの骨格の展示。右側のズラリと並んだウニには、ライトが仕込まれていて、普通は白にしか見えないウニ骨格のかすかな色彩~着色された色ではない、素の色~を見ることができる。

日本一をうたう「カエル館」。建物は大きくないが、展示数が多い。

そのカエル館に入ってすぐに視界に入ってくる展示物がこれ。うーん、ウソでも「カエルッぽいですね!」と言っておくのが礼儀だったのだろうか。

「写真OK! フラッシュOK!」の頼もしすぎる案内。

カエル水槽内に生えていたキノコ。落ち着く組み合わせ。カエルにもキノコにもさほど興味が無かったはずが、気がつくと写真を撮っている。

アカメアマガエル。何時頃が活動時間帯なのだろう。ここでも他の館でも、いつも寝ている感じで、その目を見開いたところを見たことが無い。

離れのレストラン、離宮から見えたこの建物。店員さんに聞いたら、ロープウェイの駅の跡らしい。昔は対岸から島まで、ロープウェイが通ってたのだ。

山頂に「淡島神社」という厳島社があるようだが、島の外周にはより多くの神様を祭る神社が点在している。外から移り住んだ人々が持ち寄ったものか、それとも島一周イコール全部の神様に参拝したとみなしたものか。

島内の山を抜けるトンネル。昔あったという軍事施設の名残なのだろうか。途中に横穴があり、ワイン絡みの施設のような看板が掛かっている。

柱状節理?っぽいものとか、なんか変な浸食のされ方をした岩とか。自然観察に長けた人には、むしろ水族館の外にこそ見どころも多かろう。

『ラブライブ』に押される感じで、脇に避けられてしまった「淡島うみね」ちゃん。復権の日を淡々と待つ。

伊豆・三津シーパラダイス方面から見た淡島。訪れる前はもうちょっと平坦な場所を想像してたのだが。淡島神社(標高100m超。往復50分)はね。もう少し涼しかったらね。

島全体が見どころに溢れている…とは言えない。むしろ「足りないところと、それを埋める努力」が今のこの園の見どころ、と言える。
それが埋まってしまったら、良いものを見たという充足感とさびしさの両方を感じることになるかもしれない。