2013年4月23日火曜日

リスクと向き合う 福島原発事故以降


「福島原発事故以降」とタイトルにはあるが、原発事故について語っている第一章は全体の5分の2ほど。残りは新聞に連載された著者の半生を再構成した第二章。

著者は研究者として諸々の公害問題・環境リスクに取り組んできた人。彼女がこれまでの人生の中で得てきたものを総括しつつ、さらに震災とそれに伴う原発事故という経験を経て、どういう視点で放射線のリスクを捉えるべきかを論じている。

  • 化学物質のリスク評価法で放射線のリスクを見るとどうなるか。
  • 年間1ミリシーベルトという数字は誰がどうやって出したのか。
  • 彼女のがんのリスクに対する考え方。それがどのように変わったか。
  • 今、どのような研究に取り組んでいるか。


自分が読んでまず驚いたのは、よく分からないと強調されている、低線量被曝の影響について。それでも大抵の化学物質よりはデータが揃っているのだということ。では、データが少ない場合にどのように判断するか。そこに彼女の取り組みがある。

ニュースを丹念に追っている人なら、個々の事例や議論は聞いたことのあることばかりかもしれない。この本では、それらをリスク評価の専門家の視点で整理するとこうなりますよ、というのがわかりやすく示されている。
不安にかられて情報を集めてはいるものの…という人向け。その前に、そもそも彼女自身が信頼できる人なのか…っていう方は第二章も読んで。



リスクと向きあう 福島原発事故以後
中西 準子
中央公論新社
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2013年4月14日日曜日

心が折れそうなビジネスマンが読む本


タイトルから予想されるように、よくある「うつ予防本」。

気をつけなくてはいけないのは、著者および他の人の実体験が元になっていること。ホントに心が折れそうな時に読むと、この本がきっかけで心が折れかねない。

強調されているのは、会社内の非公式な、あるいは会社の外での人間関係の大切さ。それと、兆候のつかみかた。いざ、というときの心構え。

新社会人の時は実感沸かないだろうから、社会人になって2~3年経ったころに読んでおいて、心が折れそうになる前にもう一度読み返すのが正しい読み方なのではないかと思う。

著者の立ち位置か、読者を意識してか、割と会社に対して攻撃的(副業を勧めてたり)なところがある。これがなければ、メンタルヘルスの参考書として会社から社員に勧める本にもなると思うのだけど。





2013年4月6日土曜日

コミックダッシュ!新刊カレンダーのPython2.7対応

久しぶりにDashboard覗いたら、GoogleAppEngineのPythonバージョンが2.7に上がっていて、今使っている2.5が非推奨になっていた。
ちょっと前まで「一部の先行ユーザーで試験的に…」とか言ってたのに。
せっかくだから、今のうちに対応しとくかー。 


コミックダッシュ!新刊カレンダー


久しぶりに、開発用PCのフォルダ開けてみたら、中身がない。一代前の別のPCで開発したのか。
まぁ、こんなときのためのGitHubである。さっそく、cloneして何事もなかったかのように再開だ。 

現バージョンでの稼働確認を取ろうと思ったら、さっそくBeautifulSoup(*1)が見つからないときた。
そりゃ、確かに無いよなぁ。インストールしてないもん。
ただインストールするだけならpipが便利なのだけど、AppEngineに載せるには共用のPython環境ではなく、アプリのフォルダの内側に持ち込む必要がある。
アーカイブをダウンロードし、解凍して、setup.py。懐かしいな、この感覚。

お次はなんだ。findAllメソッドが無いのか。BeautifulSoupのバージョンをPython2.7に対応するものに上げた際、PEP8(*2)に対応していない名前のメソッドが軒並みリネームされたらしい。findAllはfind_allになった。
それでも、やはりfind_allがないと来る。ただし、NoneTypeオブジェクトにはfind_allがないと来た。これはこれは。
BeautifulSoupがバージョンアップしたついでに、動作も変わってしまったようだ。以前は捕まえていたhtmlタグを見つけられなくなっている。

結局、Python2.7対応というよりは、BeautifulSoupと正規表現をいじるのに時間の大半を費やしてしまった。
パフォーマンスとか、取っているのに使っていない要素とか、いろいろ手直ししたいところはあるけれど、疲れたのでやめにした。


*1 説明しよう。BeautifulSoupとは、Webページの内容をPythonで取り扱うためのライブラリとしてメジャーなものである。
*2 説明しよう。PEP8とは、Pythonプログラマなら順守すべきとされているコーディング標準である。逆らっても罰則はない。ソースを読んだ他のPythonプログラマから鼻で笑われるくらいだ。

2013年3月27日水曜日

原発災害とアカデミズム

俺を楽しませるためにがんばれよフクシマ。おそらくは、その3。


惜しい。事故から既に2年が経っている。ここで今さら「とりあえずの解答集」とか出されても困ってしまう。そもそも本書は解答を示してもいない。既存の解答に対する疑問・不満を提示している、というところだ。

この本で描かれているのは、ある日突然に生活者としての戦いを余儀なくされた研究者達の心の声である。彼らの戸惑いとか苛立ちとか憤怒とか恨み節とかが綴られている。
専門外の自分たちには、それどころか専門の研究者にとってさえも「それはまだ分からない」以外の結論がありえない脅威、低線量被曝に対してどう向き合うか。考えあぐねているうちに大学当局は勝手に安全宣言を出してしまった。え?それってアリなの?研究者としてどうよ。


全体の構成とかはなく、12人の著者がそれぞれの問題意識をもとに独自に議論を展開している。紙面の都合で論述が省かれたところも散見される。対象読者は日本語が読める人すべて。(想定した読み手に訴えるより、まずは自分たちの思いを吐露したい、という意識で書かれているように思えた)

とにかく色々と惜しい。研究者にとって拙速や見切り発車が罪であるならば、そう主張する者の本は時間をかけて練り上げられたものであることが望ましいはずだ。逆に今を切り出すリアルタイム性を求めるならば、むしろ紙の本という体裁を選択しなかった方がよかったのではないか。タイミング大事。



2013年2月21日木曜日

電子書籍

これこそ、電子書籍ならではのアレ!
日本語版も電子化されないかなぁ。

Dungeons&Dragons

2013年2月20日水曜日

まおゆう

子供の頃読んだ、宮沢賢治の本に「世界全体が幸せにならないうちは、個人の幸福はありえない」みたいな言葉が書いてあったのを思い出した。賢治自身の言葉だったか否かは忘れたが。
賢治は田舎のしかも文筆業の人だったので、例え本心からそう思っていていたとしても、実際に世界全体を幸福にするなんてことはできっこなかった。

『まおゆう』は知識や権力、戦闘能力など、現世的な力をたまたま持ち合わせてしまったために、世界全体を平和にすることに実際に取り組まざるを得なくなった男女の話だ。……というような見方をしている。
彼らがもっと横着な性格であれば、適当なところで手を打って、それこそ世界の半分を山分けにすることもできただろう。しかし、それをやるには彼らは生真面目すぎたし、横着の行き着く先がどうなるか見えすぎ、そして彼らの住む世界は分かりやすく不幸すぎた。
彼らの目指す方向(近代化)とか手段が、倫理的にあるいは社会学経済学的に正しいかってのには、あまり興味を持っていない。フィクションの世界の住人に暮らしの満足度アンケートとか、取りようがない。であれば、その幸不幸を云々することさえ机上の空論だ。

そんなことより、彼らと彼らに巻き込まれた人々それぞれの、希望とか、才覚とか、不満とかがどのように絡まっていくのか、そういうのを見届けたい。そういうことを期待している。

2013年2月9日土曜日

囲碁の話

正のエネルギーと負のエネルギー、どっちが生き残るかゲームの始まり。

ビッグバン直後の宇宙。碁盤は宇宙全体の大きさを持ち、かつ無限に小さい。19×19の区域に分けられているが、あくまで便宜上のものだ。

それぞれの区域には、正の物質によって占められる、正のエネルギーで満ちる、負の物質で占められる、負のエネルギーで満ちる、という4つの将来があり得る。

ゲームが始まった時点の宇宙は完全に未確定。分けられた区域のそれぞれがこれら4つの状態が重なりあっている状態で始まる。そこから1手1手が打たれる度に、あり得る将来の可能性は収束していき、宇宙の重さが増していく。


序盤のうちは単なる偶然で進行していく宇宙の成長。だが、石の数が増え、互いに近づくことにより、引っ張り合いや反発が起こるようになり、電磁気学の法則の支配が顕わになっていく。石同士は互いに連結し、絡み合い、原子や分子が形作られていく。石同士の結合によってできたそれらの間にも同様に、穏やかな引き寄せ合い、あるいは激しい反応が起こり、さらに大きな構造に育っていく。構造のスケールが大きくなるにつれて、それらの動きは偶然性よりも、この形であればこう打つべしという、決定論的なものになっていく。


19×19に分け隔てられたそれぞれの区域の状態が確定してしまえば、それは宇宙の成長の余地がなくなったということ。宇宙の死である。


碁を打つ時、詰め碁の本を読む時、ふとそんなことを考えてしまわないようにしたい。