2011年10月1日土曜日

ベイビー・ステップ

リアルではスポーツ嫌いで通っている私だけど、最近の週マガのスポーツものは面白いものが多いと思う。

特に『ベイビー・ステップ』が面白くて、電子書籍化を待ち望んでいたのだけど、なかなか出てこないので自分で断裁することにした。現在、5巻まで読了。


特別に運動能力が高いわけでもない、天才的なひらめきがあるわけでもない。秀才タイプの子ってコミックの主人公にはしにくかったと思うし、ましてやスポーツものなんて、と思っていた。だけど、このコミックの主人公のエーちゃんはまさにそういうタイプ。

エーちゃんは、例えるなら、『レンズマン』に登場する超次元的な冷血生物ナドレックのような男である。

  • 彼は試合中の1球1球全てをノートに記録し続ける。
  • 彼は相手選手の一挙手一投足を高い精度で観察し続ける。
  • 彼は記録を分析し、相手選手の考えを読み、自分の調子を把握しつづける。
  • 彼は状況の変化をいち早く察知し、作戦を変更し続ける。(←PDCAサイクル)
  • 彼は相手の球を拾っては返球し、拾っては返球し、拾っては返球し…

かくして、かのナドレックの、ドミノ倒しのような計略で敵基地を自滅に追い込むがごとき方法論をもって、エーちゃんは自分より格上の相手に対して挑み続けるのである。 ちなみに、ヒロインのナツのほうは、むしろキムボール・キニスン的な人物だ。


5巻では、彼と対照的なパワー&スピード型のプレイヤー、荒谷との準決勝戦が描かれる。

身体能力に優れ、テニス経験でも圧倒的に自分を上回る荒谷に、(直感ではなく観察に基づいた)先読みと(反復練習とその記録で体系化した)制球力で挑むエーちゃん。軽きをもって重きを制し、遅きをもって迅きを制し…。((c)虚淵玄)

見所は、野獣とも評されるほどに気性の荒い荒谷が、キレかかる自分自身に耐えながら、エーちゃんを初めて敵として、その強さを認めていく過程であろう。

彼に限らず、エーちゃんを舐めた相手が、油断と驕りから生ずる隙を突かれて敗退していくという(だけの)図式は、この作品にはほとんど現れない。エーちゃんと戦う相手は、彼を通して自分のテニスと向き合って、むしろ彼に挑戦していくのである。

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